今

突然ですが、皆さんは「稲の花」を見たことがありますか。ジャガイモやリンゴ、そばの花などは割とよく知られていますが、稲の花は知らない方が多いと思います。なぜかといえば、それはひと夏に一度だけ、一瞬のうちに咲いて散るからです。それもひっそりと奥ゆかしく。開花は朝方で、時間も30分からせいぜい3時間くらいまでの短い命なのです。陽ざしや気温、雨などの気象条件、あるいは米の品種によっても異なりますが、北海道では8月初旬から咲きはじめ、九州ではお盆の後くらいに時期を迎えます。そもそもお米という漢字は、八十八の手間がかかることが由来だとか。その可憐な花は、農家の方たちの苦労をほんの一時、癒してくれるために咲くのかもしれません。

起源

4月に種を蒔き5月頃に田植えをした稲は、田んぼの緑が少しずつ濃くなる夏を迎えると、葉を増やすのをやめて穂を作り始めます。稲の真ん中の太いところから穂が顔を出すと、数日のうちにすべて現われ、花が咲きだします。これを「出穂(しゅっすい)」と呼びます。稲の穂となる部分が2つにパカッと割れると、中からおしべが伸びてきます。そこに入っている花粉が、おしべの下にあるめしべに落ちると受粉。それから約1か月後に、ようやく米になるのです。私たちがふだん何気なく食べているお米も、こうした小さな命の営みによって生まれてくると思うと、自然の不思議さを感じずにはいられませんね。

特徴

ところで郊外などに出かけていくと、きれいな田園を見つけることがあります。小さな稲が風にそよぐのどかな景色を眺めていると、いつのまにか癒されるのはなぜでしょう。「それは日本人がもともと農耕民族であったことをDNAとして受け継いでいて、知らないうちに田園風景を懐かしむからだ」という人がいます。言われてみれば、日本は昔から「瑞穂(みずほ)の国」と呼ばれてきましたし、弥生時代にはもう稲作が始まったといいますから、田園は日本人の心の原風景なのかもしれません。また、米は日本人にとって単なる食べ物ではなく、生活様式や文化とも深く関わってきて、お祭りや伝統行事、儀式、風習とも結びついていることに気づくことでしょう。

おまけのおはなし

尺貫法ってなに?
日本では昔から独自の計量単位を用いてきて、1966年に廃止されるまで「尺貫法」(しゃっかんほう)が使われてきました。その名残を米や酒、醤油などに見ることができます。今でも、米の量は「合」で表すのが一般的。1合は約180ミリリットルで、重さは150~160gです。また10合=1升、100合=1斗、1000合=1石となります。ちなみに米を炊くと約2倍にふくらむので、1合がおよそ1食分の量に当たると考えられてきました。

花言葉ってあるの?
そもそも「稲」というネーミングには、命の根、息の根といった意味合いがあるそうです。それで稲の花にも花言葉があるのではないかと調べたところ、やっぱりありました。「神聖」だそうです。なるほど。農家の方たちにとって稲の花は、その年の収穫量に直結する大事な要素であり、祈りを持って見つめる花だからなのかなあと感心しました。皆さんもどこかで稲の花を見る機会があったら、思いだしていただけるとうれしいのですが。